丸子中央病院の創立者の丸山大司先生がお亡くなりになり、その葬儀で先生の自伝「大志を抱いて」を頂きました。ご著書を読ませていただき、千曲荘病院の創立者である遠藤利治と似た価値観で生きておられたことを知りました。生前はいい意味でのライバルであり、距離があったように見えましたが、実は潜在的に似ていて、あの世ではお互いのやってきた仕事が理解できて話が弾んでいるのではないかと思いました。満蒙開拓義勇団として志願して満蒙の大地に渡ったこと、ハルピン大学の医学生になるべく必死の勉強をしたこと、終戦から避難民として逃げる中で、言葉にはできない悲惨な体験や見聞、故郷に帰ってからの放心から立ち上がり、焼け野原の東京で再び医学生となったこと、丸山医院を開院した経緯、365日24時間無休で働き、いつ病院から呼ばれてもすぐに駆けつけられるように患者さんを大切にしたこと、「医者は患者に奉仕するもの」と言い切る精神性の高さは凡人をはるかに超えておられました。年をとられてからも「老兵はただ消え去るのみ」と思うのではなく、残された人生を【生涯一医師】として、天命であの世に向かい入れられるまで、同じ老兵の力になって使命を果たしたいと願って最期まで生きようとする姿に、志を持って生きるとは丸山先生のような人を言うのだなと思いました。人の人生はそれぞれ固有で違っているのですが、時代の波に翻弄されず、自分の意志で生き抜いた男らしさも感じました。家族は寂しい思いや、つらい思いをされたことを行間から感じましたが、過ぎ去ってみると、それは大きな仕事を成し遂げられた先生を支えられた誇りとなっていることと思います。
「患者の声に真摯に耳を傾け、患者一人一人の顔が見える医業。そして身体だけでなく、心の痛みまでわかる医療。私は医というのは、5つの徳目の最高位にある仁、すなわち仁愛、慈愛、慈悲の心であると信じて疑わないし、医者は仁を施すものでありたい、そうあらねばならないと思っている」
先生、素晴らしい人生を、その教訓を私達にも分けて下さってありがとうございました。
先生の、ご冥福を心よりお祈りいたします。