聖路加国際病院の名誉院長の日野原重明さんが7月18日自宅で死去されました。105歳でした。経管栄養の延命措置を望まず自宅での療養を選択し、家族に見守られて亡くなられました。患者本位の医療を提唱され、生活習慣病の予防や、終末期医療の充実にご尽力されました。2000年には75歳以上の「新老人の会」を設立し、100歳過ぎても講演で各地を飛び回っておられました。当院でも平成15年創立45周年の時に日野原先生に講演して頂く機会を得ましたが、先生が軽々と檀上に上がった映像が強烈に残っております。上田市内の会場で、市民の方々も招待し、職員と共に先生のお話をお聞きすることができたことは貴重な思い出となっています。利他の精神に満ちた先生の爽やかな人生は私たち医療者の憧れでもあり目標でもありました。…合掌
最近感動した本は、神谷美恵子の言葉「人生は生きがいを探す旅」という本です。監修はなんと日野原重明先生で、「新老人の会」を立ち上げたきっかけが神谷さんの「生きがい」論だったと知りました。縁の不思議を感じます。その本の中から紹介します。
【生きがい喪失には必ず苦しみが伴う。苦しみには肉体的なものと精神的なものとに分けられるが、この区別は必ずしも明瞭ではない。両者は同一現象の二面であるという説もある。肉体的な苦痛はしばしば不安や焦燥を伴うし、精神的苦痛が身体の至る所に障害や苦痛をおこすことはよく知られている。しかしまた、身体的苦痛がおこったために、かえって精神的な苦痛が軽減されたり、消滅したりすることがある】【美恵子は肉体的苦痛よりはるかに深刻なのは精神的苦痛であるという。その苦痛を和らげる一つとして、精神的苦痛を他人に打ち明けることを勧めている。それによって悩みを客体化することができるからである】
身体と心は、色心不二であり、双方向に影響しあう関係であると理解していますが、「心が身体に、身体が体にどのような影響を与えてゆくのかを明らかにしていく」ことができたらいいなと思っています。この書籍の中で、日野原先生が、神谷美恵子訳「マルクス・アウレリウスの自省録」を読んだのが接点とありました。生前は会えなかったお二人ですが、きっと天国で楽しく会談しているのではないかと想像しています。日野原氏が「感謝の心は不安や恐怖を取り除く、一つの積極的な生き方の形」と書いてありましたが、その通りで、どこまで広く、どこまで深く感謝の気持ちを持ち続けられるか…、日々の生活が当たり前ではなく、実は多くの人たちに支えられていることを感じ取れる人間でありたいと思っております。「感謝の心」は心の健康のバロメーターなのかもしれません。