あけましておめでとうございます。患者様、ご家族様、病棟スタッフが気持ちよく過ごせる病棟づくりを頑張っていきたいと思っています。本年もよろしくお願いいたします。
さて、今年の第一弾は“記憶の不思議と認知症”(情報は忘れても、感情は記憶される)です。
参考:“看護につなげる”形態機能学
認知症の患者さんと接したとき、「さっき説明したのにもう忘れてしまったの?」「何度説明したらいいの?」と、とまどいを覚えたことはないでしょうか?
果たして、患者さんは本当に忘れてしまったのでしょうか。
■「覚えた」ことなら「忘れる」こともできる
「さっき言ったのにもう忘れたの?」という言葉は認知症の方を傷つけてしまう言葉です。
なぜなら、「忘れる」というのは「覚える」という前段階があってこそ成り立つものです。「覚えられない」のに、「忘れた」と責められても困ってしまいます。認知症の方に限らず、「聞いた覚えがない」のに「忘れたのね」と言われたら本当に困りますね。
私たちの脳には、入ってきた情報を認識し、記憶するはたらきがあります。そして記憶した情報を思い出すこと(想起)ができるので、新しい情報を増やし、情報どうしを比較したり、論理を組み立てたりすることができるのです。つまり、記憶するのは脳です。アルツハイマー型認知症では、新しい情報を記憶することにかかわる海馬の神経細胞が障害されるため、新しいことを覚えられません。しかし、感情の記憶に海馬は関係しないので、海馬が障害されても感情の記憶は残ります。
患者さんは、嫌な思いをすると内容は覚えていなくても不安定になります。悲しい思いも残ります。「楽しい、気持ち良い、うれしい!」は、安心につながる記憶として残ります。私たちは、この感情の記憶を大切にしたケアを目指しています。できるだけ「ダメ!ダメ!」を言わないで、安全を図りながら「楽しい」「気持ちいい」記憶をたくさん残そうと努めています。だれだって、嫌な思いより、うれしい思いをしながら日々を過ごしたいものです。認知症の特性を踏まえたケアは安心できる生活環境を提供できるのです。
師長 堀内幸子