フィギュアースケートで銀メダルを獲得した浅田真央と宿命の対決相手キム・ヨナの戦いは、多くの日本の国民に感動を与えてくれました。安藤美姫も鈴木明子も、日本の選手の奮闘ぶりは、見ていて伝わってくるものがありました。それぞれがそれぞれに全力を出し切り、自己との戦いにおいて負けることなく、そのプレッシャーを乗り越えて、楽しんでいる姿は、美しくあり、爽やかでもあり、見ている私たちにも清涼感を与えてくれました。たった数分間の与えられた時間の中に、どれだけの念いが込められているのかと想像すると、その数分間の永遠とも感じられる時間、あっという間であったという時間、心から楽しめたという時間、幸せを感じたという時間が、どれだけ尊い珠玉の価値を含んだ時間であったかが分かります。それぞれの選手が、どれだけの経験をし、挫折に耐え、厳しい練習に耐えて、目標に向かってひたむきに努力してきたことでしょう。その結果が、4分間の結晶となって開花しているように思います。彼女たちの美しさを引き出したものは一体何だったのかと考えると、自分の内面を深く見つめることによってつかんだ己の個性の輝きを、厳しい練習を重ねることで磨きだしているように思うのです。世界中の国々で何万人の人たちが、固唾を呑んで、彼女たちの氷上での戦いを見ていたことでしょう。競争することは、厳しい戦いの中におかれて大変なことであると思うのですが、ライバルがいるからこそ切磋琢磨することができ、お互いに成長できるありがたい存在でもあることがよくわかります。競争のない世界の方が、気ままで、ストレスもなく、楽でいいようにも思えるのですが、人間は何か志がなければ、甘えが生まれ停滞や堕落の道へ入ることも多いのではないでしょうか。もちろん競争において、嫉妬心から人を蹴落としたり、陥れて勝ちにこだわるのは問題外ですが、オリンピックという競争の世界で、互いに切磋琢磨し、自己の限界突破に挑戦し、努力を重ねた姿は、美しく輝いていました。目標を持ち、夢に向かって努力することの尊さ、ライバルのいることのありがたさや切磋琢磨による輝きを教えてくれ、感動を与えてくれた氷上の女神たちに「ありがとう」と、感謝の言葉を伝えたいと思います。
