新しく新築された南棟の竣工式に伴って、病院の理念に「希望」を加えました。今まで、愛と信頼と奉仕の3つの理念の基で病院の運営を進めていましたが、南棟の設計が始まった頃から病院の理念に何かが足りないという気持ちが強くなってきて、それは何なのかを模索し続けていました。「病気になっても人として幸せに生きていく」ために必要なもの・・・、「暗く、苦しく、寂しい、悲しい、辛い、こんな状況のどん底に入ったとき、人はどうやって脱出しくことができるのか?」とイメージした時、「希望」という言葉が浮かびました。現実がたとえどんなに苦しくても『希望』さえあればそれに向かって人は前進していけます。『希望』を光としてイメージすると、闇夜の大海を照らす灯台の光のように、船が座礁せずに岸に辿りつける力を与えてくれます。「夜と霧」の作者であるフランクルがアウシュビッツ収容所の絶望と隣り合わせの中で生き延びられたのは、心の中に希望を失わなかったからです。「希望」という言葉は、パンドラの箱から出てきた最後の言葉ですが、あらゆる苦しみを教訓という光に変える魔法の言葉のようにも感じます。ウォルトディズニ―の大成功の前には、ド貧乏でネズミが出たり入ったりするような部屋に住んでいて、そのネズミを見てミッキーマウスというキャラクターが生まれたと聞いていますが、鼠を毎日見ているような極貧生活がなければ、世界も魅了するミッキーというキャラクターが生まれなかったわけです。与えられた場所からプラスを生み出すか、マイナスを生み出すかの違いは大きいと思いました。奇跡のリンゴの木村さんも絶望の中にあって、希望を失うことはありませんでした。そう考えると、簡単に絶望しないことは大切だと思えてきます。
私たちの病院で、患者さんの心の中に灯る希望の光を妨げている、心の障害物を取り除くお手伝いが出来たら、これほどうれしいことはありません。自分が致命傷だと思っていたことが、実は「かすり傷」だったと思えたら、力強く歩き出すこともできるでしょう。そんなきっかけを与えられる病院になりたいと思っております。愛と信頼と奉仕に「希望」が加わって、更にチーム力をアップして、私達職員一人一人も希望を胸に新しい出発をしていこうと思います。