国立新美術館に初めて行きました。オルセー美術館が全面改装工事のため、空前のコレクションの貸し出しが行なわれているのだそうです。その恩恵を受けて、日本の美術館で鑑賞できるということですから、飛行機代をかけなくても名画を見ることが出来る豊かな時代に感謝です。印象派のファンにとっては、きっと、待ちに待った展覧会であったのでしょう。会場は長蛇の列が続き、私たち夫婦は末尾に並びました。順番を待ち、誘導されて、エスカレーターを上り、ガラス張りの光溢れる美術館から会場へと入ると、人、人、人、の混雑振りで前に進むことが至難の業でした。絵画を見ようとしても、人の頭ばかりで、人の頭の上から半分だけ見るような状態でした。まるでラッシュ時の山手線に乗って、名画を眺める迷宮美術館に招待されたかのような錯覚になりました。少しでも人が少ないところへ移動して、じっと眺めているとまた人がすぐそばに集まってくるので、横を向いた瞬間に人の顔にぶつかりそうで、人の息がかかる場所で絵を見るという新しい体験で、本当に疲れて帰ってきました。それでも、その人混みと熱気に負けないで強烈な個性を放っていたのが、初来日の「アンリ・ルソー」の「蛇使いの女」でした。誠に不思議な絵で厚みがあって、メルヘンチックで幻想的でした。また、ゴッホの「星降る夜」は、一瞬見ただけでも、心に深く残りました。モネ、ドガ、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、一枚だけピカソがあったと思いますが、これだけ名だたる芸術家が揃っていても、やはりピカソだけは別格という雰囲気が漂っていました。
絵画を見るのが楽しみなだけの素人鑑賞家ですが、素人には、ゆったりとした時間と、ゆったりとした空間がある中で、じっくりと眺めさせていただけると、それだけで、満ち足りた気分になってくるのですが・・・。時間が限られ、一人でも多くのファンに見ていただきたいと思うと、それなりの負荷を覚悟しないといけないのは当然かもしれません。